2010年4月11日日曜日

J.クレイグ・ペンター『ヒトゲノムを解読した男』

≪紹介≫
ベンチャー企業「セレーラ」を率い、世界中の科学者を敵に回して、鮮烈なヒトゲノム解読競争を繰り広げたクレイグ。ベンター。その桁違いの情熱と行動力は、いったいどこから来るのか。重鎮ジェームズ・ワトソン、ヒトゲノム計画リーダーのフランシス・コリンズらとの確執も包み隠さず語る。今、最も熱い科学者の待望の自叙伝。


僕は、大学で少しばかり、分子生物学や遺伝子工学の分野を学んでいるので、その関連の本をたまに読むんですが、この本はそういった分野のことを全く知らない人にも読んでほしい、とても面白い本です。

専門的な本を読む場合、専門用語や独特の言い回しなどに、足を引っ張られるわけですが、この本は、そういった問題を回避できるように配慮されていると思います。不注意や過剰な活動性の原因遺伝子の話など、ところどころに興味深い科学的話題が挟まれてもいます。ペンター博士はまさにこの遺伝子を持っていて、自身の野心的な行動や性格の原因となっていると語っています。

著者がどうしてゲノムの研究をしたかについては、自身の戦争の経験が大きく影響していると言っています。助かる見込みのない兵士が生きようとするのに対して、助かる見込みのある兵士が、生きることをあきらめて死んでいく。多くの人間が死んでいく中で、そんな人間の儚さ、不思議さを学び、その本質を知らずにはいられなくなった、という経験から来ているそうです。

政府や内部の人間(主に設けることを第一に考えている人間)と対立しながらも成功していく姿に、すごい人だと思わずにはいられないです。ペンター博士は人生を賭けた大きな挑戦を何度もしているし、並はずれた野心と自信を持って努力したことが伝わってきます。特に、ショウジョウバエのゲノム解析に成功して、その分野に劇的な利益をもたらすことに成功したというくだりには、胸が熱くなってしまいました。(本書の中でも語られていますが、ショウジョウバエは多くの遺伝的な発見がなされてきた、生物の一つであり、飼育が簡単などの理由から今でも多くの研究者の研究対象となっています。wikipedia

今現在は人工生命の研究をしているらしくて、これを聞くとすぐにそんな馬鹿なと思いますが、ヒトゲノムの解読をする、と聞かされた人々も同じように感じたのかもしれません。

自叙伝という物を読むのはおそらく初めてなのですが、良い本に出会えたなと思いました。この物語は著者の視点からのもので、著者も最後に誤りがある可能性に言及しています。それでも、なるべく誤りのないように、多くの人に確認をとったり、引用文献(これだけで16ページ)をたくさん並べているところに好感が持てました。今度別の視点で書かれた本を読みたいです。

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