2011年5月12日木曜日

悪貨

タイトル:悪貨

著者:島田雅彦

著者について:
島田雅彦という人物を知ったのは、確か朝日新聞の日曜版のコラムだったと思う。本の最後の経歴見ても、なにもピンとこなかった。外語大卒らしい。そのコラムは結構面白かった気がするけど、どんな内容だか忘れてしまった。著者の作品を読むのは初めて。
この本と出合ったきっかけ:
何かのランキングで見てなんとなく借りたとしか言いようがない。

主な思いだせる登場人物:
池尻 彼岸コミューン代表、元経済学教授。野々宮の恩人。
野々宮 野々宮に恩があり、彼の代表する彼岸コミューンに多額の寄付をしている。
日笠 警察。偽造貨幣の調査に長けている。
エリカ 日笠の部下。
張燕燕 エリカが潜入捜査をしている宝石店の店長。
郭解 中国の資産家。
フクロウ たぐいまれな観察眼を持っている。後藤とは古くからの知り合い。
後藤 フクロウの父親が経営していた印刷所に勤めていた。今は中国で仕事をしている。
鉄幹 野々宮の秘書役。

内容について:
悪貨と聞くと、「悪貨は良貨を駆逐する」という経済学でよく聞く言葉が浮かんでくる。どんなんだっけと思ってたら、作中にも出てきたけどもう忘れてしまった…。

最初はホームレスの男が100万円の入ったビニール袋を拾うことから話が始まる。ビニール袋に入った100万円があちらこちらで使われて、いろいろな人にわたっていく様子が面白かった。今手元にあるお金も誰が触ったかわからないお金だなぁと改めて思った。

結局そのお金は贋金だということがわかるわけだけど、そこから警察がお金の流れを逆にたどり、ただの偽札騒動が思わぬ方向へと広がっていく。実社会にもありそうに感じてしまうような設定なところがおもしろさの一つだと思う。おそらく作者は経済学に結構明るいだろうし、それをこのようなフィクションにしてしまうのはすごい。小説の感想を書くと、作者はすごい一辺倒になってしまうことに今気がついた。まぁいいか。

仮に、本作のような形でハイパーインフレが現実に起こるとしたらどうなるだろうか(ネタばれ?)。「デフレの正体」的にいえば、貯蓄をいっぱい蓄えているリタイアした高齢者の方々の資産価値は下がり、一方現役の生産者はインフレした状態で給料をもらえるわけだから、富の再分配が行われると思われる。とりあえず、インフレ、デフレが良い悪いとかは、僕にわよくわからんので、詳しくは語らないが、中国の貿易相手のとしては米国に次ぐ2番手である日本(参照)がインフレになったら中国にも悪い影響ありそうだよ、と思う。今のご時世で日本における中国の輸入物の値段が上がったらだれも買わなくなっちゃうんじゃないかと思う。もちろん悪いものばかりではないとは思うが。まぁ、この段落はただの空論です。

現実に起こり得そうな話っていうのは、やっぱり面白い。ところどころ小ネタが効いているというか、伏線みたいなものがけこう散らばっていてそういう点も面白かった。

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悪貨 (100周年書き下ろし)

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